青城SS | ナノ
「なあ、知ってる?」
「なに? 花巻今から豆知識でも披露するの?」
「あーアレな。枝豆が喋るヤツな」
「犬じゃないっけ?」
「いや、豆だろ」
「そうだっけ? 犬が可愛い顔して、ねぇ、知ってる? キスすると一秒間に二億個の菌が口の中を行き来するんだよーって教えてくれるヤツ」
「は? なにそれ。マジで知りたくなかったんだけど」
「で、花巻の豆知識はなに?」
「豆知識じゃねぇけど、矢巾が結婚すんだって」
「え、待って。嘘でしょ?」
「これがマジなんだなぁ」
「はあ!? 先輩差し置いて結婚する!? フツー!?」
「な、まさか矢巾が先にって思うよな。まあ、めでたいけど」
「大丈夫なの?」
「なにが?」
「ちゃんとした子なの?」
「どんな心配だよ」
「だって矢巾、前に彼女の言われるがままプレゼント買いまくったらカードの請求額50万になったって言ってなかった?」
「……それ、俺な」
「あ、そうだっけ? じゃあ、アレだ! 私物を勝手に売られたっていう!」
「それも俺な」
「うっわ。マジか。じゃあ、コレか。浮気疑われてスマホ叩き割られたっての」
「それも俺だわ! お前わかって言ってんだろ!」
「にしても、矢巾めー。どこで出会うんだ、結婚相手とか」
「出会いっつか、普通に大学の時のサークルで一緒だったんだと」
「普通? そんなの普通じゃないからね! ほら、花巻がいい例じゃん! 大学の時の彼女でしょ? スマホ割られたり、物売られたりさ!」
「やっぱわざとだったのかよ!」
「いいなぁー結婚」
「ミョウジって結婚願望とかあんの?」
「あるある。一回は結婚してみたいじゃん。うちの夫がお世話になっておりますーとか言ってみたいじゃん」
「へー。なんか意外」
「意外かなー?」
「部活やってた時も今も、わりと仕事命って感じじゃん」
「まーねー。仕事はやめたくないよねぇ」
「はあー、相変わらずすげぇな」
「そういう花巻は?」
「結婚? 結婚したいって思えるような子がいれば、そりゃ、したいってなるんじゃん? つか誰かいい子いねぇ?」
「いい子? いい子ねぇ……。ひとりいるかなぁ」
「お、マジで」
「うん。そこそこの企業勤めで、男癖も酒癖も悪くなくて、東京住み」
「いいじゃん」
「地元は宮城」
「マジ? 俺の知ってる子だったりする?」
「元青葉城西高校」
「ん?」
「元男子バレー部マネージャー」
「いや、それお前じゃん」
「正解!」
「あー、確かにいい企業にお勤めだし、男癖も酒癖も悪くねぇし、東京に住んでるし。なんなら東京でもよく飯食ってるもんな、俺ら」
「結構優良物件でしょ? 私」
「ですね」
「じゃあ、考えておいてね」
「……は?」
「私、矢巾のとこ行くから」
「ちょ、え、……はあ!?」
「鈍すぎじゃん。ばーか」

ねぇ、知ってた?

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